森からの贈り物

きのこは、森からの贈り物といわれますが、その代表的なきのこは、乾しいたけで、乾しいたけの持ち味、良さについて、少し、詳しく話をしてみましょう。

1. 食べられるきのこの数
2. きのこの美味しさ
3. 乾しいたけの美味しさの秘密
4. 乾しいたけ栽培は、自然力を活かした原木栽培
5. 原木栽培は、美味しさ、安全・安心感、そして環境への優しさなどの点で優れている
6. しいたけの保健作用
7. より美味しく召し上がって頂くための留意点
(参考)乾しいたけの生産・消費の現状

1. 食べられるきのこの数

わが国には、約5千種類のきのこが野生していますが、食べられるきのこは3百種類ぐらいです。
日頃、市場で見かけるきのこは、乾しいたけ、生しいたけ、えのきたけ、ぶなしめじ、ひらたけ、まいたけ、なめこ、えりんぎなど8種類です。
何れも栽培されているきのこですが、昔は農家が森で栽培していましたが、現在では、乾しいたけを除いて、栽培地は山村を離れ、里に降り、栽培者も農家から企業の手に移りつつあります。

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2. きのこの美味しさ

きのこの美味しさは、旨み、香り、食感にあると言われていますが、西欧では、ボルチーニ(フランス名はセップ)日本名ではヤマドリタケというきのこが、姿は、きのこらしく量感があって、旨み、香り、食感も素晴らしいということで、きのこの王様と呼ばれています。
東洋で、ボルチーニに匹敵するきのこの王様は、乾しいたけといってよいでしょう。旨み、香り、食感の何れもが他のきのこよりも優れています。
まったけが、王様ではないかと思う人もあるでしょうが、まったけは、香り、食感は確かによいのですが、肝心の旨みに欠けます。現在、まったけの価格が高いのは、まったけが採れなくなったからで、昭和四〇年頃までは、まったけよりも乾しいたけの方が価格も高く珍重されていたのです。

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3. 乾しいたけの美味しさの秘密

乾しいたけの美味しさを具体的に説明してみましょう。
生しいたけを乾燥すると乾しいたけになりますが、生しいたけに比べて、乾しいたけは、美味しさが十倍にも増えるのです。
その理由は、しいたけ細胞には「リボ核酸」と、それを分解して旨みにする「酵素」が存在していますが、生しいたけでは、酵素が自由に働けないように調節されています。
ところが、乾燥させると細胞が壊れることで、コントロールはなくなり、調理加熱すると酵素が働き始め、旨み成分が増えるのです。
乾しいたけは保存性の良さもありますが、実は、それ以上に美味しさにあるといえます。

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4. 乾しいたけ栽培は、自然力を活かした原木栽培

国産の乾しいたけの良さは、それだけではありません。栽培の仕方が、自然力を活かした原木栽培で、中国産や生鮮きのことは異なっています。
原木栽培というのは、きのこが、森で自然に生えているのと、殆んど変わらない自然の力をフルに生かして栽培する方法です。それに対して、中国産や、生鮮きのこの多くは菌床栽培といって、原木の代わりにオガ粉に米ぬかなどの栄養剤を加え、培地を作り、きのこの種を植え付け、ハウス内で冷暖房などの操作で、きのこを発生させるといった人工的な栽培方法です。
原木栽培は、きのこの発生まで2年間もかかりますが、菌床栽培では、4~5カ月の短期間で、きのこが採れ、しかも、乾しいたけは春、秋の自然発生しか収穫できないのに、菌床栽培では、暖冷房することで、1年中、何時でも収穫できるメリットはあります。

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5. 原木栽培は、美味しさ、安全・安心感、そして環境への優しさなどの点で優れている

しかし、2年間もかけ森で、じっくり育て上げた原木栽培と、促成の菌床栽培とでは、旨み、香り、食感など美味しさが違います。
違いは他にもあります。自然に近い栽培である原木栽培と人工的な菌床栽培とでは、今日の消費者の関心の高い安全・安心感が段違いといってよいでしょう。
さらに、原木栽培は、その多くを自然力に頼っているだけに、栽培過程における二酸化炭素排出量の少ない、環境に優しいエコ食品といってよいでしょう。

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6. しいたけの保健作用

しいたけには、健康な体を作る保健作用、分かりやすくいうと薬用効果があります。先ず、乾しいたけは、ビタミンDが豊富なことです。ビタミンDは、腸からのカルシウムの吸収や、骨へのカルシウム吸着に大きな役割を果たしています。
また、食品の中でも、しいたけは、カリウムを最も多く含んでいます。カリウムは、ナトリウムの排泄を促し、血圧を下げ、筋肉や心筋の活動を正常に保ち、便秘解消、老廃物の排泄を促す働きがあります。
それに、食物繊維も豊富です。食物繊維は、腸管内におけるコレステロールや、発がん物質などの有害物質を吸着し排泄を速めます。
その他、しいたけには、エリタデニンという他のきのこ類にはない特有の成分が含まれており、コレステロール値や血圧を下げる働きがあります。また、レンチナンという成分が含まれており、レンチナンは一九八五年に坑腫瘍剤として認可されています。

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7. より美味しく召し上がって頂くための留意点

ここで、乾しいたけを、より美味しく召し上がって頂くための留意点を紹介してみましょう

  • 種類(品柄)と料理の相性
    乾しいたけには、傘の肉が厚く、縁は強く内側に巻き込み、全体が丸みを帯びているどんこと、傘の肉が薄く、巻き込みは浅く扁平な形をしているこうしんに分けられます。
    どんこは、含め煮や炭火焼など、乾しいたけが主役に近い料理に、こうしんは散らし寿し、炒め物など、乾しいたけが脇役の料理に向いています。
  • 選び方
    選び方は、乾燥がしっかりしており、傘の表面は茶褐色で皺が少なく艶があり、傘の裏は明るい淡黄色のものが良品です。
  • 戻し方
    戻し方は、5℃ぐらいの冷水(冷蔵庫内)に、こうしんは5時間前後、どんこは十時間、前後かけて戻します。早く戻したい時は冷蔵庫内で約一時間、水戻し、してから、乾しいたけを四つ切りか、八つ切りにして再度、三○分ぐらい水戻しすれば短時間で戻ります。
  • 保存方法
    保存にあたっての大敵は湿気と、空気中の酸素で、密封容器に入れて冷蔵庫などで保存するのが最善です。
  • 品質表示と賞味期限
    JAS(日本農林規格)で、品名、原材料名、原料原産地名、内容量、賞味期限、保存方法、加工者、および原産国を包装袋に明記することになっていますので、お確かめ下さい。
    賞味期限は一年ぐらいですが、保存を上手にすれば、それ以上経過しても心配なく召し上がれます。
    自然豊かな森からの贈り物、乾しいたけを、どうぞ召し上がって下さい。

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(参考)乾しいたけの生産・消費の現状

  • 昭和四〇年、五〇年代、自然健康食品ブームの中で、乾しいたけは脚光を浴び、中元、歳暮などギフト商品で、常時、ベストテン入りするなど、消費は極めて好調で、輸出もまた、順調に伸びていた
  • ところが、昭和六〇年代に入った頃から、外食化など食生活の変革で、乾しいたけ離れが進んだ
  • さらに昭和六二年頃からは、中国産の内外市場への激増で国産の消費は激減、価格が再生産価格を下回るまでに下がったことで、生産も激減冬の時代を迎える
  • しかし、ここ三年ほど前から中国産の農薬汚染、食品偽装問題で中国産の敬遠がすすみ、国産が見直されつつあり、価格も回復している
  • また、平成一七年、食育基本法が制定されるなど、食生活見直し機運が高まる中で、旬や伝統食品、自然食品に陽が当たってきており、乾しいたけの消費環境は好転してきている
  • 乾しいたけの価格は良くなり業界に少し活気が戻ってきてはいるが、生産者、業者など業界構成員の高齢化は進み、後継者など新規参入者の参入も少ないなど、多くの問題点を抱えている。